「思いで預金」に必要なのは、おカネではなく心の余裕

投稿者: | 2016年10月14日

今年5月に行われた、「Mizuho.hack」。
銀行×Pepperをテーマにした開発イベントだったのですが、入賞作品が展示されているとのこと!
しかも、実際のみずほ銀行の店頭に!
…ということで、見てきました!

◆思いで預金、体験してみた!
展示場所は、みずほ銀行八重洲口店。東京駅の目の前にあります。

▲ガラス張りの建物の2階が、みずほ銀行。

▲ガラス張りの建物の2階が、みずほ銀行。


入ると…いました!Pepper!
「あっ、足を止めてくれてありがとうございますー!」
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気づかれました。
少し彼に付き合ってみます。

思いで預金 OMOYO」というロボットアプリを実演しており、
銀行に来た記念にムービーを撮ってくれる仕組みのようです。

▲いきなりお題を出してきました。

▲いきなりお題を出してきました。


なになに…?
「両親から3万円振り込まれたよ!その3万円どうします?」
いいね!何に使おうかなあ…

Pepper
さん、に、いち…

えっ、ここで撮るの!?答えればいいの!?


「お父さんありがとう。貯金します!(ガッツポーズ)」

Pepperにはきれいな心で接したい僕。嘘も方便ですよね。
そんなふうにして、心で言い訳してるうちに、「思いで預金」の体験は終了。
dsc_2287
今回は体験版なので、撮ったムービーはその場限りでしたが、
本番ではムービーがサーバーに蓄積され、あとから、数年後でも見返すことができるようになるようです。
動画アルバム、タイムカプセルみたいで面白い!

◆えっ、お客さんの反応、悪すぎ…?
せっかくなので、他のお客さんの反応も確かめることにしました。

残念ながら、足を止める人がほとんどいない。
興味を持ったお客さんがPepperに近づき、会話が始まっても、
「別にいい」と苦笑しながら去っていく人ばかり。
銀行の案内員さんも、Pepperの展示について触れる様子はありませんでした。

Pepper、思うようにいい働きができていないようです。
なんでだろう?
考えてみたんですが、設置場所と恥ずかしさに問題がある気がします。

▲入り口すぐ横、誰もが目にする場所のはず…

▲入り口すぐ横、誰もが目にする場所のはず…


今回の展示、入口のATMを過ぎてすぐ、窓口や待合コーナーよりも手前、
誰もが目にする場所に置いてあるのです。
しかし、多くのお客さんが素通りしていきます。

なぜ?
簡単です。立ち止まる理由も余裕もない場所だから。

多くの人はATMで簡単に用件を済ませて帰るか、窓口で手続きをするために足早に発券機へ向かいます。
その道すがらに置いてあるロボットには、今この瞬間、興味が無いのです。
誰も、ロボットに預ける時間的余裕なんてない。

東京駅前の店舗ですから、お客さんはビジネスマンがほとんどだと思うのです。
窓口が開いている平日の日中ですから、なおさらです。
みんな早く手続きを終わらせて帰社するなり、営業先に向かうなりしなければならない。

そりゃそうだ。あたりまえですよね。
あたりまえロボ体操に入れてもいいくらい、あたりまえ。

もちろん、最近話題のPepperに興味を持つお客さんもいたはずです。
でも、ちゃんと体験してもらえなかった。

なぜ?
やはり答えは単純。恥ずかしいからです。

他の客が足早に窓口へ向かう中、自分だけがロボットとおしゃべりをして、
あまつさえ「3万円もらえたらどうしたい?」なんて、サイコロトークを楽しんでいる。

恥ずかしいです。
Pepper慣れを自負している僕ですら、大の大人が大声で「貯金します!」なんて、恥ずかしすぎます。

…と、ここまで書くと、アプリ制作チームに怒られそうなのですが、
僕は、このアプリのアイデアはとってもいいものだと思っていて、
Pepperクリエイターとして見習いたいところがたくさんあります。

では、今回の「思いで預金」は、どうすればよかったのでしょうか。

◆子連れ客と待合コーナー
「思いで預金」は、設置店舗も位置も変えて、体験してもらうべきです。
住宅街<に近い小さい店舗の、待合コーナーの中で、子連れ客をターゲットにするのがいいはず。

そもそも、銀行って子連れでは行きにくい場所です。
「銀行 子連れ」で検索すると、「子連れで銀行に行ったら困った」という声が出てきます。
こういう声を解消するために、Pepperと「思いで預金」を置くのはどうでしょうか。

目的重視の場所である銀行ですが、窓口ではどうしても待ち時間が発生してしまう。
子供は静かに待てないので、他のお客さんのひんしゅくを買ってしまいます。

そこであえて、Pepperが空気を読まずに話しかけます。
「こんにちは!もしも今、お手伝いしておこづかいがもらえたらどうする?」と。

すると子供は話し始めます。
「んんっと…ゲーム買ってほしい!」とか。
すると、Pepperや大人は「お手伝い頑張ろうね!」と促せます。

あるいは、Pepperがこう話しかけます。
「将来の夢を教えて!」

女の子が素直に答えます。
「おはなやさん!」
このやり取りをPepperが動画で収めます。

これこそ「思いで預金」で目指している未来のワンシーンのはずです。

導入当初は、余計にひんしゅくを買うかもしれません。苦情も来るかもしれません。
それでもPepperが空気を読まないおしゃべりを続ければ、
常連客の間には「Pepperがいる店舗」として認知されます。
そしてお母さんたちは「子連れで行っても、多少騒がしくても大丈夫な銀行」という認識が広まります。

こうして子連れ客に積極利用してもらえれば、「子どもの思い出も貯まる場所」として、
銀行にもPepperにも前向きな注目が集まるんじゃないでしょうか。

◆みずほ銀行には諦めないでほしい
諦めないでほしいです。

今回の展示には「みずほ銀行のPepper活用事例紹介」としての意味合いもあると思うので、
(その取り組みは世界的に評価されているようです。すごい!)
旗艦店で実施するのは正しいと思うのですが。

間違っても、今回の展示の結果を受けて、後ろ向きな結論は出してほしくない。
「お客様の反応が悪かった」「だからこのアプリはダメだ」とは決めつけずに、
ぜひ、設置店舗や位置を変えて、長い目で見て試してみてほしい。

粘り強く、試行錯誤が大切だと思います。
「思いで預金」体験版の展示を見て、ここで感想を書きながら、そんなことを考えました。
僕も「つくる側」として期待に応えるべく、アップデートにマイナーチェンジ、頑張らないとなあ。

あ、そうそう。
みずほ銀行 八重洲口支店での「思いで預金 OMOYO」の展示は、10月いっぱいまで続くようですよ!
お金に余裕がない時に、心には余裕を持って、ぜひ体験に行ってみてください!