「3メートル先にあるミュージカル」に学ぶ空間づくり

投稿者: | 2016年10月16日

先日、知り合いにご紹介いただいたミュージカル「SELVA!」を見てきました。
「3メートル先にあるミュージカル」をコンセプトに、小劇場の狭い空間で、
壮大なストーリーが展開されるんですが、特に驚いたのはその空間づくりです。

◆入場ゲートが開いた瞬間から、物語は始まっている。
まず驚かされたのが、プロローグ
なんと今回の「SELVA!」では、開場直後から物語が始まっています。

本作は、いわば虫の世界を舞台にした「ライオンキング」のような構成。
人間には馴染みの薄い世界ですが、世界観を理解しなければ面白くありません。
そこで登場人物たちが、物語の背景や用語を前説してくれるという親切設計です。

タイトルにもなっている「SELVA」(セルヴァ)とはなにか。
ここが虫たちの世界であり、対立構造があること。
そういうことを(彼らは茶番劇だと言ってましたが)面白おかしく、説明してくれます。

いつもは何気なく聞いている「開演前の注意事項」も、虫たちの世界観を踏まえて説明。
さらに、ミュージカルならではの方法で、楽しく覚えさせてくれます。

ひと通り説明が終わって、さあいよいよ始まるか!と思ったら、まさかの写真撮影タイムまで。
開演中は撮影禁止だけど、今だけはOKらしく…
「はい、チーズ」ではなく、「はい、セルヴァ」!
まだ開演前だというのに、なんてサービス精神旺盛なムシさんたち。

◆こだわりのあるセット、美しい照明
前説含め上演中、僕がひそかに気にしていたのは、大道具(セット)と照明。
狭い空間ですが、とにかく本気で作ってあります。隅々まで撮って、研究したいくらい。
森の中のエメラルドグリーンの光や、迫力あるダンスシーンでの赤と黄の照明が、美しい。
作る側は本当は気にしてほしくないのかもしれないけど、つい注目してしまいました。

◆小劇場とミュージカルに共通する「恥ずかしさ」に勝つ
演劇って見てる側が恥ずかしくなること、ありませんか?
妙な白々しさ、無理して演じてるっぽさが見えてしまって、苦笑するしかないような時。

特に、小さな劇場でやる演劇は、距離が近いので細部まで見えてしまいます。
また、壇上と客席の境目が曖昧なことも多いので、なんかヘンに巻き込まれてる気持ちになることがあります。

また、似たような恥ずかしさは、ミュージカルでも感じる機会があるように思います。
ミュージカルは、私たちにとって馴染みの薄い世界観で展開することが多いですし、
時折、なんでそこで突然歌い出すんだよ!なんかこっ恥ずかしいわ!って突っ込みたくなることも。

演劇って、ちょっとした違和感が致命的な悪印象となる気がします。

「SELVA!」は、そういう意味で弱点を持ったジャンルの作品ですが、
完成度の高さで、弱点を見事に打ち破っていると感じました。
ぼーっと見ていても、違和感なく物語に入り込んで、楽しむことができる。

なぜか?と考えたときに思い起こされるのが、先述した前説や舞台装置です。
観客を世界観に引き込み、迎え入れ、参加させてくれました。
裏方も細部を突き詰めることで、物語に没頭できる空間を作っていたように思います。

◆3メートル先の世界に誘われた2時間半(前説込み)
なんちゃって分析になりましたが、本当に「SELVA!」恐るべし。
とっても楽しめて、勉強にもなりました。
あまり触れませんでしたが、アクションも迫力が満点でした。最前列で見ればよかった…!
また、キャラクターも非常に魅力的。ちなみに僕が好きだったのは、三枚目なクモ男です。

風雲かぼちゃの馬車の皆さん、本当にありがとうございました!
「SELVA!」は、記事執筆時点の今日16日が千秋楽だそうです。お時間ある方はぜひ。
行くときは時間に余裕を持って、開場時間に合わせて入ることをオススメします!